【徹底解説】キングダム龐煖（ほうけん）は何巻・何話で死亡？最後のシーンを解説

龐煖が倒れた──
それは「やっと討てた」と胸を撫で下ろす場面のはずでした。
実際、長年にわたり多くの仲間を葬ってきた「武神」の最期に、読者の多くは安堵を覚えました。

ですが、一方で──
「あっけない」「こんなにも呆気なく終わるのか」
「信が勝ったのに、なぜか虚しい」
そんな声も、確かに存在しました。

龐煖は、単なる悪役ではなかった。
“武によって人を救う”という信念を抱きながら、どこまでも孤独に歩み続けた男。
その死は、「強さとは何か？」という問いを、私たち読者に突きつけてきます。

この記事では、原作『キングダム』58巻・627話に描かれた龐煖の最期を追いながら、
その“意味”を深く掘り下げていきます。

龐煖（ほうけん）は何巻・何話で死亡したのか？

龐煖の最期──それは、ただの“強敵を倒した”場面ではありませんでした。
力を極めた男の死に、なぜか胸がざらついた。
「あれほどの存在が、こんなにもあっけなく終わるのか？」
「いや、本当に終わったのは龐煖なのか──」

そう感じたあなたは、きっともう『キングダム』という作品の“外側”ではなく、“内側”に立っている人です。
龐煖の死は、ひとつの勝敗を超えた「思想の終わり」でした。
では、彼が倒れたのはどこだったのか？　そしてなぜ、あの場所だったのか？
物語の重心とも言えるその場面から、まずは読み解いていきましょう。

単行本58巻・第627話「道の行方」

龐煖の死亡が描かれるのは、単行本58巻・第627話「道の行方」です。
場所は、朱海平原の戦い15日目──まさに決戦のクライマックス。
王翦・楊端和・桓騎が連動する大戦略の中で、信と龐煖という“対話にならない者同士”の一騎打ちが始まります。

龐煖は、王騎を殺し、麃公を屠り、信の心にも深い傷を刻んできた男。
その“武神”と呼ばれた存在が、一人の若き将軍の想いによって討たれる──。
その事実だけでも、キングダムの物語がひとつの節目を迎えたことが分かります。

“武神”が倒れた戦場──朱海平原の終着点

龐煖が倒れた場所は、ただの戦場ではありません。
それは、“人の力”と“孤高の力”がぶつかり、どちらが未来へ残るのかが試された、価値の交差点でした。

龐煖は「人を救うための力」を信じながら、誰とも繋がらず、ただ一人で“武”を極めようとしました。
一方で信は、王騎から受け継いだ矛を握り、仲間たちの“想い”を背負って立つ男。
ふたりの間にあったのは、単なる力の差ではなく、「世界の見方」そのものの違いだったのです。

──この戦いは、「どちらが強いか」ではなく、
「どちらの“強さ”が未来に残るか」を決めるものだった。
龐煖の死が、ただの敵キャラの退場ではなく、キングダムという物語全体の“思想的な節目”になったのは、まさにこの戦場だったからです。

龐煖はなぜ“武”を信じ続けたのか？

龐煖の最期を“空虚”に感じた理由──
それは、彼が最後の最後まで“武”という力にすがりついていたからです。

ここでは、「なぜ龐煖は“武”を選び、そして捨てられなかったのか？」
その根本にある「救い」への渇望と、「人間」への絶望を紐解いていきます。

「人を救う」ために選んだ強さ──その原点

龐煖の“武”には、ただの好戦的な強さとは違う、ある種の「祈り」のようなものが込められていました。
彼が掲げていたのは、「人の世の痛みを断ち切る」ための力。
戦乱で苦しむ者を、“絶対的な力”でもって救うことこそが、彼の理想だったのです。

その背景には、かつて彼が師と仰いだ人物との別離──そして人間社会に対する深い不信感がありました。
龐煖は、「人と人は理解し合えない」という結論に至り、“人を救うのは対話ではなく、力だ”という答えにすがったのです。

そのため彼は、一切の感情を表に出さず、名声も仲間も必要とせず、「孤独な強さ」に自らを閉じ込めていきます。
彼にとっての“武”とは、人を超えた存在になることで、逆説的に「人を救う」道だった──
だからこそ、龐煖の言う“救い”は、誰にも理解されなかったのです。

孤高こそが最大の弱さだった

龐煖の強さは確かに圧倒的でした。
王騎を討ち、麃公を屠り、数多くの強者を打ち倒してきたその実力に、疑いの余地はありません。

しかし、その“強さ”が誰とも交わらないままに築かれていたことが、最大の弱点でした。

彼は、人を信じることができなかった。
仲間と歩むことも、弱さをさらけ出すこともできなかった。
その結果、龐煖の“強さ”は誰の心にも届かず、ただ「強いだけの存在」として孤立していきました。

信との戦いで、その差は明確になります。
信が振るったのは「王騎の矛」──それは“力”であると同時に、“想いの結晶”でもありました。
仲間と歩み、人の痛みを知り、支え合ってきた信にとって、“武”とは一人で抱えるものではなく、「皆で強くなる力」だったのです。

龐煖の死が、どこか虚しかったのは、彼が最後まで“人”になれなかったから。
強くあろうとしたその姿は確かに立派でした。
けれど、それは“誰にも届かない強さ”であり続けたのです。

信との戦いで決定的に現れた“強さ”の違い

龐煖と信──その戦いは、ただの肉体と武力の激突ではありませんでした。
ぶつかり合っていたのは、“武を極めた孤高の男”と、“人と共に歩む無名の若者”という、まったく異なる「強さのかたち」だったのです。

王騎の矛と“仲間の重さ”を背負った信

信が龐煖と対峙する直前、彼の手に握られていたのは──かつて龐煖に討たれた王騎将軍の矛でした。
それは“武器”であると同時に、“王騎の魂”であり、“想いのバトン”でもあります。

龐煖がひとりで強さを求め続けたのに対し、信は多くの仲間と共に戦い、共に負け、共に立ち上がってきた。
だからこそ、信の剣には「一人分以上の重さ」が宿っていたのです。

飛信隊の仲間たち、楚水、河了貂、羌瘣──
誰か一人でも欠けていたら、信はここまで来られなかった。
その“繋がり”が、龐煖には無かったのです。

刃ではなく、“想い”で勝った戦い

龐煖の一撃は、鋭く、重く、鋼のように冷たい。
信の一撃は、荒々しく、不器用で、でも人の温度がこもっている。

戦いの中で龐煖が語ったのは、「我は人の痛みを救う者」。
しかし信は、それに対してこう返します。
「あんたは人を救ってなんかいない!!」

龐煖が“痛み”を知っていたのなら、それを人と共有する道もあったはずです。
でも彼は、それを拒み、独りで抱えてしまった。
それこそが、龐煖の最大の敗因でした。

信は、ただ強かったわけではない。
彼の背後には、王騎の遺志があり、仲間の絆があり、亡くなった者たちの想いがあった。
そのすべてが、龐煖の“孤独な強さ”を凌駕したのです。

この戦いで勝ったのは、「力の強さ」ではなく、「想いの強さ」でした。
だからこそ、龐煖の敗北には“納得”と同時に、“哀しさ”が滲んでいたのだと思います。

龐煖の“最期の表情”が語るもの

龐煖は、死の間際──何かを言いかけました。
「我は……」
しかし、その続きを語ることはありませんでした。
言葉の途中で崩れ落ちたその姿と、無言のままの表情──
そこに、龐煖という男の本当の“人間性”が滲んでいたように思うのです。

「我は……」──語られなかった言葉の意味

龐煖が最後に残した「我は……」という言葉。
その先に続くはずだった“何か”を、彼自身も見つけられなかったのではないか──
そんな気がしてなりません。

「人を救う者」
「武神」
「超越者」
そのどれを名乗ろうとしても、今や自分の中に確信がない。
それが彼の“沈黙”として現れたのではないでしょうか。

龐煖は、最期の瞬間に「敗北した」と明確に認めたわけではありません。
でも、彼の身体が崩れ落ちたときの“顔”には、敗北を自覚した人間だけが持つ哀しみがありました。

信が感じた“哀しみ”と、勝利の代償

信は、龐煖を倒した直後──喜びの声を上げませんでした。
疲れ切った体で立ち尽くし、ただ、そこに崩れた龐煖を見つめていた。
あのときの信の表情も、また印象的です。

龐煖を討ったはずなのに、何も晴れやかなものはなかった。
そこには、“勝った”という事実と同時に、「どうしようもなかったものへの共感」があったのだと思います。

信は、龐煖の強さも、哀しみも知っていた。
だからこそ、その死が「ただの敵討ち」で終わらないことを、彼は理解していた。
龐煖は「人ではないもの」を目指しながら、最後の最後に“人間”として倒れたのかもしれません。

そしてその姿を、「俺たちが歩んできた強さで打ち破った」という事実だけが、静かに物語を先に進めていくのです。

【まとめ】龐煖の死は「敗北」ではなかったのか？

龐煖は、信に討たれました。
誰とも交わらず、ただ“力”だけを信じ、“救い”を掲げながら孤独に歩んできた男。
その最期は、あまりにも静かで、そして空虚だった。

けれど、それは本当に「敗北」だったのでしょうか？

確かに龐煖は、信に倒されました。
“武神”の名は地に堕ち、語りかけようとした言葉は途中で途切れました。
しかし、あれほどまでに「何かを成し遂げたかった」強い思いがあったことも、また事実です。

私たちはその姿を、ただの「悪役の終焉」として切り捨てることができるでしょうか。
龐煖の強さ、哀しさ、迷い、執着。
それらは、私たちが現実の中で感じる「正しさとは何か」「救いとは何か」という問いと、きっと地続きにあるのです。

“武の極致”が迎えた結末をどう捉えるか

龐煖が敗れたことで、キングダムの物語は大きな転換点を迎えました。
「力だけでは人を救えない」
「強さには“支え合う意思”が必要だ」
そんなメッセージが、彼の死を通して描かれたのだと思います。

しかしだからこそ──私たちは最後に、こう問われている気がするのです。

「あなたは、龐煖の“強さ”を、どう感じましたか？」

次回：信と政──「人を信じた者たち」の物語へ

次回の記事では、信と龐煖の対比をさらに拡張し、
「王」と「将軍」という立場で“人を背負う覚悟”を選んだ政と信の関係に迫ります。

2人はなぜ、互いに“背中を預けられる存在”になったのか？
そこに、龐煖にはなかった“もう一つの強さ”があるのかもしれません。